クラウドファンディングの基礎からソーシャルレンディングを理解する

クラウドファンディングという言葉のややこしさ

クラウドファンディングという言葉を聞いたときに、真っ先に「ソーシャルレンディング」である「融資型クラウドファンディング」だとか、「株式投資型クラウドファンディング」「寄付型クラウドファンディング」といったタイプのクラウドファンディングを想起する人はほとんどいないのではないかと思います。

クラウドファンディングという言葉のイメージとしてもっとも広く知られているのは、おそらくは、「購入型クラウドファンディング」と呼ばれるクラウドファンディングになるでしょう。

クラウドファンディングという言葉を投げかけたときに、もし「購入型クラウドファンディング」以外のクラウドファンディングの返答をしてくる人がいた場合、その人は、すでにクラウドファンディングについて、ある一定以上の知識を持っている人間であると判断してまず間違いありません。

クラウドファンディングという言葉の意味と逸脱

クラウドファンディングというのは、そもそも「不特定多数の個人が、ある特定のプロジェクトなり組織に資金提供をする資金調達の方法」を指す言葉です。言葉自体は、それ以上でもそれ以下でもありません。

ですが、クラウドファンディングという言葉が実際に使われる場においては、事情が多少違ってくるようなのです。

クラウドファンディングをよく知らない人に向けてクラウドファンディングという言葉を使った場合、その相手に対して、この言葉は「不特定多数の個人が、ある資金難のプロジェクトに支援の資金提供を行い、集まったお金が目標金額に達したら、そのプロジェクトの『成果物』である『モノ』や『サービス』がリターンとして返ってくる」という意味で伝わってしまう傾向があります。

このような伝わり方、受け取り方は、そこで使われた言葉が「購入型クラウドファンディング」であれば正確なのですが、「不特定多数の個人が、ある特定のプロジェクトなり組織に資金提供をする資金調達の方法」というクラウドファンディング本来の意味からは、やや逸脱していると言わざるをえないでしょう。

クラウドファンディングという単語の複数性

クラウドファンディングという単語は「不特定多数の個人が、ある特定のプロジェクトなり組織に資金提供をする資金調達の方法」という一つの定義しか持っていないのですが、その一つの定義しか持っていないはずのクラウドファンディングという言葉は、それが実際に使われる場においては、複数の「指示対象」を持つことになります。

クラウドファンディングという単語を使うとき、この一つの定義だけを持つ単語は、最低でも、同時に「購入型」「寄付型」「融資型」「株式投資型」といった四つの対象を指し示す言葉として機能することになるのです。

ですから、クラウドファンディングという言葉を、一方が「融資型クラウドファンディング」という意味で、もう一方が「購入型クラウドファンディング」という意味で使っている場合、その両者の間でなされる会話は、同じ単語を用いていながら違う対象について語り合っている、という状況が生まれます。

クラウドファンディングという言葉をめぐっては、齟齬やすれ違いなどが起こりやすく、「わかりにくい」だとか「全体像がつかみにくい」というような意見を眼にすることもあるのですが、このような事態は、おそらく、クラウドファウンディングという言葉の曖昧な使われ方に起因しているといえるでしょう。

ソーシャルレンディングという単語が持つ機能

「融資型クラウドファンディング」というクラウドファンディングにおける「ひとつの型」は、「ソーシャルレンディング」という専用の言葉で言い直されています。

「融資型クラウドファンディング」でクラウドファンディングを行うユーザーたちが、「ソーシャルレンディング」という言葉を使うようになった背景には、クラウドファンディングという言葉の曖昧な使われ方を原因とした混乱や誤解などを避けるという目的も、もしかしたらあったのかもしれません。

クラウドファンディングという言葉は一つの単語から複数の指示対象を持ってしまうのですが、「ソーシャルレンディング」という言葉は「融資型クラウドファンディングのことである」という風に、その対象を一つに限定するものとして機能します。

指示対象を限定する専門用語の利便性

「ソーシャルレンディング」という言葉を使うことによって、他のクラウドファンディングとは違う限定されたクラウドファンディングの話をしているのだ、ということを前提の説明を省いた状態で始めることができます。

「融資型クラウドファンディング=ソーシャルレンディング」のように、「寄付型クラウドファンディング」「株式投資型クラウドファンディング」にも、「クラウドファンディング」という言葉を想起させないような特別な呼称があれば、クラウドファンディングという言葉の複数性に関わる問題やややこしさが少しは軽減されるのではないかと思われます。

今後、クラウドファンディングという言葉がさらに指示対象の複数性を増していくことになる場合、「ソーシャルレンディング」のような、クラウドファンディングの定義の先に広がる枝葉末節や選択肢をそれぞれにあらわす専門の言葉は、ますます重要になってくるのかもしれません。